〜2013年:基準地価の推移〜 大都市圏の地価が5年ぶりに上昇へ
2013年7月1日時点の都道府県地価(基準地価)が9月下旬に公表された。
神奈川県内の地価は住宅地、商業地、工業地とも、2008年以来5年ぶりに上昇した。
上昇地域も大幅に拡大するなど、回復傾向が鮮明になった。
東京、名古屋、大阪の三大都市圏でも5年ぶりの上昇になるなど、景気回復を背景に、地価の下げ止まり感が強まった。
県内927地点の平均変動率は、住宅地が0.1%、商業地0.9%、工業地0.6%のプラスに。
継続地点のうち上昇と横ばいが占める割合は住宅地で66.7%、商業地で73.1%となり、いずれも前年の2倍近くになった。
住宅地の継続地点615のうち266地点が上昇した。
前年より継続地点がやや増えたため、単純比較はできないものの、前年の56地点を大幅に上回った形だ。
上昇地点は横浜が158、川崎が50地点をはじめ、大和、茅ヶ崎市など38地点に上った。
神奈川新聞によると、県担当者は「特に都心への接近性に優れた地域、最寄り駅から徒歩圏内の利便性の高い地域を中心に、不動産市況に回復傾向が出始めている」と分析している。
商業地は継続212地点のうち115地点で上昇し、横浜、川崎市が全体の9割を占めた。
特に川崎市中原区新丸子2丁目は変動率プラス13.4%で全国1位に。再開発が進む武蔵小杉駅周辺地域には、高層マンションが林立している。
等々力緑地に通じる小杉御殿町2丁目の住宅地は6.1%の上昇率で県内トップに。
武蔵小杉駅周辺は駅南側のマンション・ビル建設に加え、今後は北側で日本医科大学病院の建て替えに伴う再開発、複合商業施設建設など大型プロジェクトがあり、地価上昇への影響が大きいようだ。
横浜中華街のある横浜市中区山下町は変動率12%プラスで県内2位、全国3位だった。
東日本大震災で団体客が伸び悩んだ11年調査では下落率が最も大きかったが、前年の0.5%下落から見事に回復した。
東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転による連結効果が大きい。
埼玉方面からの来訪者が増えているらしく、4〜8月の元町・中華街駅の輸送人員は前年同期比10%増の454万人。
5月の大型連休では約3割アップしたという。
津波被害の懸念から前年、前々年ともに下落幅が大きかった湘南地域の住宅地はマイナス幅を縮小した。
藤沢市鵠沼海岸6丁目がマイナス1.8%、同1丁目が同1.6%、辻堂東海岸4丁目が同1.7%。鎌倉市腰越3丁目が同2.3%、長谷2丁目が同1.9%だった。
県は「いまだに沿岸部は需要が弱い傾向があるようだ」と分析。
一方、「順調に回復してきている感触」と新聞紙上にコメントする住宅会社もある。
県西部や三浦半島地域などは下落した。
平均変動率がマイナス3%を超えたのは、山北町の3.8%減をはじめ、中井町、三浦市、真鶴町、南足柄市など2市31町。
二宮町、湯河原町など5町村はマイナス2%台だった。
人口減少や高齢化が進む地域といえ、都市部との格差が広がる傾向が見られる。
工業地は0.6%上昇した。
首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の整備が進む中、物流拠点の魅力が高まる県央地域での上昇が目立つ。
厚木市、愛川町ともに約1.5%上昇。
愛川町の内陸工業団地に今夏、ヤマトホールディングスの大型拠点「厚木ゲートウェイ」が完成した。
◆住宅地
1㎡当たりの県内平均価格は16万9900円。
継続調査615地点のうち、横ばい144地点、下落は205地点だった。
市区町村別の平均変動率は、横浜市は1.1%増で、横ばいの瀬谷区を除く17区が上昇だった。
都心への利便性が高い川崎市は1.4%増。
中原区の3.1%増をトップに、すべての区で上昇した。
横浜、川崎市がけん引する形で県全体が上昇。
浜銀総研の湯口主任研究員は、「景気が回復傾向にあることを反映した」とした上で、住宅ローン金利を低水準に抑えた金融政策が功を奏したことや中古住宅販売の好調、建売住宅販売の堅調な推移を指摘している(9月21日神奈川新聞)。
さらに、消費税率引き上げが市場の回復を足踏みさせる懸念を示しつつも、基調として県内の地価はしばらく安定的に上昇していく、と推測している。
地価上位5地点をみると、横浜市中区山手町247-6が1位で1㎡当たり45万8000円。
2位は横浜市港北区日吉本町1-32-18の同45万5000円。
3位の川崎市中原区小杉御殿町2-144-1は45万2000円と、ベスト3が僅差で並んでいる。
4位の横浜市青葉区美しが丘5-23-17は37万7000円、5位は川崎市中原区上丸子山王町2-1319-4の36万7000円で2.2%上昇した。
◆商業地
1㎡当たりの平均価格は40万2000円。
継続調査地点のうち73.1% が上昇や横ばいであり、前年比の倍近くに。
リニア中央新幹線の中間駅に計画された相模原市緑区の県立相原高校近くにある地点の一つは2.7%増となり、同区平均の0.2%減を大きく上回った。
県西部の山北町は4.1%減、大井町3.1 %減など、前年度より下落幅が1ポイント近く拡大した。
同じく人口減や高齢化する三浦市、湯河原町なども2〜3%台の下落に。
価格上位10地点はすべて前年と同じ。
1㎡当たりの価格は30年連続で横浜駅西口(西区南幸1-12-7)の474万円で1位。
前年より6.8%上昇した。
2位は西区北幸1-8-4が275万円、3位は中区山下町154-6外が205万円とそれぞれ伸びた。
4位の川崎市川崎区駅前本町3-6外が184万円、5位の川崎区砂子2-11-14外が170万円と3〜2% 台の上昇となった。
上昇率が高い順は、川崎市中原区新丸子東2-907-14の13.4%増を筆頭に、横浜市中区山下町154-6外が12%増、中原区今井南町579-7が7.8%増、中原区新丸子東1-788-5が7%、横浜市西区南幸1-12-7が6.8%と大幅に伸びた。
◆全国の動向
全国平均は、住宅地がマイナス1.8%で22年連続、商業地が同2.1%で6年連続の下落。
しかし、3大都市圏(東京、大阪、名古屋)の商業地は5年ぶりに上昇に転じた。
上昇率は平均0.6%。住宅地はマイナス0.1 %で、横ばい状態になった。
3大都市圏の調査地点のうち、商業地が約5割、住宅地の約3割が上昇した。
名古屋圏の商業地は0.7%上昇して東京、大阪圏を上回った。
3大都市圏を除く地方圏は住宅地が2.5%、商業地が3.1%それぞれ下落した。
下落幅は縮小したものの、調査地点の9割で下がるなど、大都市との格差が見られる。
大都市ではアベノミクス効果による不動産投資、住宅購入意欲の高まりが見られ、地価の回復基調が広がっている。
さらに、消費税引き上げをにらんだ駆け込み需要効果も強まっているようだ。
都道府県別の変動率は、住宅地が愛知のプラス0.8%をトップに、宮城、東京、神奈川の順で続いた。
商業地は大阪の同1.1%を筆頭に神奈川|、愛知、東京、宮城の順。
東日本大震災の被災地は高台移転や復興事業による需要増で上昇地点が増えた。
住宅地では岩手県大槌町の調査地点が30.5%の上昇率で全国1位に。
上位10地点のうち9地点を被災地が占めた。
1平方m当たりの最高価格は、東京都中央区銀座2丁目の明治屋銀座ビル。
※基準地価とは〜
各都道府県が不動産鑑定士の評価を参考に7月1日時点の地価を調べ、国土交通省がまとめて公表している。
2013年の調査地点は2万1989地点。
国の公示地価(1月1日時点)を補完する役割もあり、土地取引の指標になる。
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