築年数の古いマンションや団地等の建替えに関して
最近では築年数の古いマンション等の建物が増えてきました。
今後、日本では以下の様な事例等のトラブルは全国的に増える事が予想されます。
〜団地内建物一括建替決議に反対し、建替不参加の区分所有者に対する、建替組合の売渡請求(建替円滑化法15条1項)が認容されたケース〜
◎一団地全棟の建替えが可能に
一棟の建物を区分して所有する法制については、民法(旧)208条に規定された垂直区分の棟割長屋への対応がありましたが、昭和38年4月に垂直水平の区分所有建物(マンション)に対応する「建物の区分所有等に関する法律」が新設されたことで同条を削除。
昭和58年には区分所有法が改正され、「建替えは所有者および議決権の各5分の4以上の決議」と多数決原理を採用。阪神・淡路大震災(平成7年)で、マンション建替えの難点が顕在化したため、平成14年に同法をさらに改正し、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」も併設。
改正法は、一棟毎の建替えのほか、団地全体の一括建替えの項目を追加(70条1項) 。
また、建替参加者に法人格を与え、権利変換手続を新設するなど、担保権や賃借権の処理を簡略化しました(円滑化法)。
本件については、従来の棟単位の建替えではなく、12棟全部の一括建替えの可否を敷地共有者の全員集会で決議する区分所有法70条1項の活用が鍵になります。
最近都内の大規模団地で一括建替事例の判決がありました。
鉄筋コンクリート造4、5階建ての17棟(404戸)が建つこの団地では、平成6年から建替えの検討が始まり、平成14年の法改正の後、平成18年4月、平成19年12月、平成21年3月と組合総会で建替決議投票が実施されましたが、いずれも不成立。
同年9月12日に実施された4回目の投票で、団地内建物全体の区分所有者および議決権の各5分の4以上且つ各建物毎の区分所有者および議決権の各3分の2以上の賛成で建替決議(法70条1項)が成立しました。平成22年7月20日には都知事から建替組合の設立認可(円滑化法9条1項)を得、同月25日設立総会を開催。
9月1日到達の書状で組合から建替えの非参加者に売渡請求(同15条1項)の意思表示があり、10月14日に非参加者(17戸)に売買代金を弁済供託し、組合が建物明渡しおよび移転登記手続等請求を提訴しました。
平成24年10月には被告のうち16戸と訴訟上の和解が成立しましたが被告1戸が残留。
同年11月15日、被告は原告が供託していた売買代金の供託金(5622万円余)を還付請求し受領しました(同年10月被告が参加者14名から被告の明渡遅延による建替遅延の損害賠償請求を提訴されたが、これは14名と原告組合との共謀であり、この不法行為による損害賠償の一部として還付を請求するとの抗弁付) 。
その上で被告は原告組合の建替決議や売渡請求の瑕疵を挙げ、それらの無効を主張しましたが、裁判所は原告による反論を認容し、「売渡請求と直接関連性のない請求権で供託金を受領することは認められない」、「供託金を受領しながら居住を続け建替えを事実上阻止することは権利の濫用として許されない」と被告に建物明渡しと移転登記等を命じました(平成24年12月27日 東京地裁判決 判例時報2187号) 。
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